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雨龍堂annex

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お試しで。

やるやる詐欺で此間から言ってました、不定期連載・・・始めてみようかと。
相変わらずしつこく別件依頼に絡む妄想です。
もぅ本当にアバ王は別件依頼が神懸り過ぎてぞわぞわします。好きっ!

と言うことで。

お試し版的な雷ライ不定期連載など。
「続き」からどうぞ。


お付き合い下さり有難うございます。

・雷ライになる予定
・アバドン王の別件依頼に関する妄想および捏造です
・過去捏造も出てきます
・ライドウは真名を不知火由李(ゆい)といいます

・不定期連載です、なるべく次回まで間が空かないよう頑張ります・・・


*****

とさり、と寝台に腰掛けて、ライドウは四角く切り取られた空に視線を向けた。
硝子窓の向こうを名も知らぬ鳥がすいと横切る。黄昏時には少し早い。
『どうした、ユイ?具合でも…』
「いえ、何でもありません…ゴウト」
見上げて問う目付け役の言を遮って、ライドウは静かに返した。薄暮の迫る町を歩く民人から視線を外し、律儀に足元の黒猫へと双眸を向けて。弱々しいながらも明るさを残す窓を背にするライドウの、感情の希薄な白皙に影が差す。
この数日、ライドウは少し様子がおかしかった。
とは言えその変化は見分け難く、始終共に過ごすゴウトでさえ思い違いだろうかと首を傾ぐくらいで。
探偵見習いらしからぬ言葉少ないたどたどしい様子は相変わらずでも調査の聞き込みはこなしているし、修験界での鍛練も怠らない。何が変わったという訳ではなく、以前と同じに思える。
そう、以前…かの依頼を遂行するまで、と。
あの日を境に、ゴウトはライドウの所作に違和感を覚えるようになった。
自室に戻り装備を外して小さく吐息したり、夜中に眠るでもなく寝台に身を横たわらせたまま天井を眺めていたり、ゴウトの知る限りこれまでにない行動をとる事がある。これだけでオカシイと言い切れないのは、この若き召喚師が黙して語らない為に確証が持てないからだ。ただ疲れが蓄積されているだけ、と言う可能性もある。
ゴウトは軽く跳躍し、ライドウの腰掛ける寝台へと上がった。
『疲れているなら、明日はゆっくり休むといい』
いくら若いと言えど休息は必要だ。傍らに添うように腰を落ち着かせて、ゴウトは、じっと眼差しを向けてくる後進を労るように言った。と、ライドウの整った涼やかな面の、薄く整った唇が微かに笑みの形を作る。が、それもすぐに消える。
「珍しいですね、」
ゴウトが休めと進言するなど、と双眸に感情を浮かべる事なくのたまう。
感情がないのではない。優秀なサマナーに育つようにと仕組まれたプログラムに、情操教育が不要と判断され削ぎ落とされた、ただそれだけ。この子供は、感情を表す術を学べなかったのだ。
年若いながら才気に溢れたこの子供が何に心を囚われているのか、ゴウトに予想できない訳ではなかった。様子がおかしいと思い始めたのは、例の一件があってからだ。
依頼を回してきた秘密将校を恨めしく思う。しかし遂行を決めたのはライドウで、またそれを許したのはゴウト自身だ。
表に出ない、出せない依頼……ある人物の暗殺、という如何にも裏社会的な内容。
『疲れが溜っておるのではないのか?』
見上げる秀麗な面持ちは、何時にも増して白く思える。もとより白い肌が、今は青白くさえ見えた。
「お気遣いだけ、有難く」
物分かりのいい返事も何時もの事だ。こんな時くらい素直に心配させてくれ、とゴウトは思う。
艶やかな黒い毛並に覆われた小さな頭を垂れたゴウトに、
「少し、出掛けてきます」
穏やかな声音が降り掛かり、ぎし、と寝台が軋みを上げた。立ち上がったライドウは、壁に立掛けてあった太刀を取り、白いガンベルトを腰に回している。
『こんな時分から…何処へ?』
大きな翡翠色の瞳をぱちぱちと瞬いて、ゴウトも寝台の上で立ち上がった。ライドウが出掛けるならば、それに付き従い見届けるのが目付け役たる彼の役目だから。だが、
「行って参ります」
ライドウは学帽を目深に被り直し、外套を取ると素早く部屋を出て行った。
『あ、こら!待たぬかっ』
猫の持つ機敏性を生かして飛び出したゴウトだったが、無情にも目の前で扉は閉ざされてしまった。
そうなると、猫の身ではどうしようもなくなる。
カリカリと木製の扉をひっかきライドウの名を呼ぶも、その声はただ猫の鳴き声として廊下に響くだけ。
『あやつ…、何を考えておるっ』
焦れて悪態まがいの言を呟き、ゴウトは身を翻した。猫なれば窓からの出入口も可能、少しでも隙間があれば、と窓際へと駆け寄る。少し高い位置にある窓枠に上るために、ゴウトは再び寝台へと上がった。と、その傍ら、書生が住み込む為に用意されたらしい西洋風の文机にゴウトの碧玉の双眸が止まった。
『あやつ…っ、あやつ、一体…』
そこには、封魔具である管の収まった白いホルダーが置かれたままで。
ゴウトは柔らかな寝具に足を取られながらも踏ん張ると、窓辺に上り立った。カタンと硝子が乾いた音をたてて揺れる。しかし窓は、ぴったりと隙間なく閉じられていて。
『……由李っ』
絞り出すように低く唸り、ゴウトは窓の下を横切る通りに視線を落とす。用水路と並行する通りに、見慣れた黒尽めの書生の姿があった。
ゆらりと黒が揺れ、窓辺に立つゴウトを見上げる。そして、学帽の鍔にそっと手をかけて辞儀をひとつ残し、ライドウは外套の裾を翻した。その姿が黄昏に呑まれるのにそう時間はかからなかった。
『何のつもりだ…』
自身を守るべき大事な仲魔を置いたまま、目付け役さえ近寄せずに。
『帰ってくるのだろうな…ライドウよ』
懇願にも似た呟きは、ヒトならざる存在を封じた呪具の残された狭い空間に溢れ落ち、消えた。

*****


こんなところで続きます、すみません。
気長にお付き合い頂けましたら嬉しい限り。

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