- 2012/05/01
- Category : BSR
小ネタ
ぼ~んやり髪乾かしつつアイス食べたいなぁ~・・・かーらーの、小ネタ。
いきなり始まっていきなり終わる系のチカダテです。
それでもよろしければ、続きから。
ほんと~に、いきなり始まっていきなり終わる系です。
オチなどない!
たぶん、一緒に住んでるっぽい現代パラレルなチカダテです。
それでもよろしければ、どうぞお付き合い下さい・・・
*****
「あっちぃ~」
ハーフパンツを穿いただけで上半身は裸のままで、頭から被ったスポーツタオルで奔放に跳ねる髪をがしがしと拭きながら、元親が廊下からリビングへと続くドアを開けて入ってきた。
春は駆け足に過ぎてしまったようで、このところ気温が急にあがって初夏の暑さを思わせる。
元親はぺたぺたと足音をさせながらキッチンへ向かうと、冷蔵庫を開けた。厳密には冷凍室だ。
「……おぉ?!」
素っ頓狂な声をあげて、元親は冷凍室の中をあさり始めた。
その様子に、ダイニングテーブルで新聞を眺めていた政宗が訝しげに隻眼を向けた。
カウンター越しに冷凍室を物色する大きな背中に、
「何時までも開けっ放しにしてんじゃねぇよ。さっさと閉めろ」
わずか眉間にしわを寄せて政宗が言う。
仕方なしに冷凍室をあさるのを止めて、元親は冷蔵室からビールを1缶取った。
ぺたぺたと歩きながらプルタブを開けて口に含む。ご、ご、と逸らせた喉を上下させながら勢いよく流し込み、元親はダイニングの政宗の傍に寄った。
「よぉ、俺のアイス知らね?」
「アイスって、どんなヤツだよ?スティックのやつは此間食っちまってただろが」
もう一口飲んで、元親は軽くなった缶をテーブルに置いた。
「いや、カップの。ちょいリッチなやつ」
有名メーカーの、割引をしないカップアイス。買ってすぐに食べずにとっておいたと思ったのが見当たらない。
「…ラムレーズンの?」
「そうそう、ラムレーズンの。…あ、もしかしてオマエっ」
やや思案していた政宗が思い出したように言ったのに、元親が声を大きくした。
「あれ、オレんじゃなかったかァ?」
「違ぇよ、俺ンだよ、取っといたんだよ」
ガタン、と音をたてて乱暴に椅子に座って、元親は素知らぬ風に新聞を捲る政宗に言い募った。
「食ったのか?食ったんだな?俺のラムレーズン!」
「…っせぇなぁ、食ったよ、オレんだと思ってたもん」
「違ぇよ、俺ンだよ!あーもう、楽しみに取ってたのにぃ!」
カコン、カコン、と間抜けな音をさせて缶ビールをテーブルにぶつけながら抗議する元親に、政宗は眉根を寄せた。
「せこい事言ってんなよ、欲しけりゃ買ってくりゃいいだろっ」
「じゃあ政宗が買ってきてくれよ、食ったの政宗なんだし」
「What a nuisance!アンタが行けよ」
バサリ、乱暴に読みかけの新聞を閉じて、政宗は上体を元親の方に捻った。
もし立場が逆なら、きっと政宗は元親に買いに行けと言っているだろう。(そして恐らく元親は買いに行くのだ)
「だいたい、そんなに大事なら名前書いときゃよかったんだ」
息巻く政宗が勢い任せに言った事に引っ込みがつかなくなっている事に、元親は気付いている。
さて、どこが落とし所か…
「おぅ、じゃあオレのもんには名前書いとく事にするわ」
元親はカウンターの端にあったペン立てからマジックを取り出した。
次いで、目の前で柳眉を吊り上げ形の良い唇をつんと尖らせた政宗の腕を取り上げた。
「なに…」
怪訝そうに問いを投げ掛けてくる政宗に「んー」とだけ言ってキャップをとると、元親はペン先を政宗の白皙の肌に向けた。
「ちょ…っ、just a minute!」
元親に掴まれた手を引こうと力を入れた政宗だったが、単純な力勝負に勝てる筈もなく。
「あーっ、てめ…っ」
肌を走るペン先の感覚に政宗が唇を引き結んだ。
「よっし、これでどうだ!」
得意気に言って、元親は機嫌よさそうにペンを振って見せる。
未だ元親の手に握られたままの政宗の、日に焼けていない白い腕には、『元親』の二文字。
「名前、書けっつったろ?」
「そ、それは…」
「俺のもん」
「…いや、そう…だけど」
どう返せばいいのやら、といった様子の政宗が、しばし言い淀んだ挙句にハァと溜め息をこぼした。
「ばっか…ンなもん誰もとらねぇよ」
元親に預けたままの片腕に視線をおとし、政宗は口元を綻ばせる。
「わっかんねーだろ、狙ってるヤツがいるかもしんねーし、取られたら困るし」
おどけたように口を尖らせて言う元親に、政宗は微苦笑した。
「ねぇよ、てか困ンのかよ」
「困る困る、だって俺ンだもん」
掴んだ腕を軽く引く。
それを拒む事なく、政宗は元親の肩に額を乗せるように身を預けた。
続かないっ!!
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