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雨龍堂annex

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小ネタ

BSRチカダテの小ネタです。
現パです。

お得意の、無駄に設定ばかり膨れ上がって内容のない何時ものアレです。


・いきなり始まって、いきなり終わる。オチなどないw
・チカダテです。いたしてなくても、チカダテなのです。だって、そう思って書いてるから(無茶苦茶

そんなんでもいいよ~、て方はちょっとばかしお付き合い下さい。



*****

深夜、既に日付が新しくなって半時ほど経った頃。
自宅マンションの玄関ドアのカギを開け、元親はなるべく音をたてないようにゆっくりと引いた。
疚しい事があるからではなく、同居しているパートナーがもし寝ていたら・・・という配慮だ。
しかし元親の思惑とは裏腹に、玄関から続く廊下の先、擦りガラスの扉の向こうは皓々と明かりが点いている。
後ろ手に玄関ドアを閉め、一連の所作で施錠すると、元親はネクタイを緩めながら明かりの灯るリビングダイニングへと歩を進めた。
と、

ガシャ ガシャ ガシャ ガシャ

リビングへ近付くにつれ、やや籠ったような、それでいて耳につく音が聞こえてきた。
───あぁ、またか
元親は隻眼を細める。
この扉の向こう、リビングと一体型になったキッチンに立っているであろう元親のパートナーは、名を伊達政宗という。
ビジネス街からやや外れた路地裏にある小さなトラットリアのオーナーシェフだ。
イタリアの有名なシェフの元に弟子入りもしていたらしい。
その政宗が、店から帰って自宅キッチンでガシャガシャと音を立てるのには理由があった。
───あいつの性格で、よく耐えられるもんだ
元親はリビングと廊下を隔てるドアの前で瞑目し、小さく嘆息した。そして、ドアノブに手を掛けると同時、口の端をゆるりと持ち上げて笑みを作る。
「ただいま、政宗」
「・・・おぅ」
ドアを開けて直ぐにあるキッチンで、長身の美丈夫が片腕に抱えた大振りなボウルから目を離す事なく答える。
さきほどから聞こえていたのは、メレンゲを泡立てる音だ。
一心不乱に、何の感情も宿さない眸が少しずつ嵩を増していく白いふわふわのメレンゲをただただ見詰めている。
「早かったな」
片腕でボウルを固定し、もう片方の手で泡だて器を動かしながら、やはり視線はそのままで政宗が言った。
「ん?あぁ、そうかな?まぁまだ明日も仕事だしな」
元親がこの時間に帰宅したのは仕事が原因ではない。今日は常から己の下で勤勉に働いてくれている部下のガス抜きをしてやろうと飲みに行っていた為だ。
それについては前々から政宗に予定を話していたし、なんら問題はない。
・・・・・・筈だ。
元親はダイニングの椅子に鞄と外したネクタイを置いて、キッチンへと戻った。冷蔵庫をあけてミネラルウォーターをとり、一気に呷る。
「メシは?」
「食ってきた」
「風呂、何時でも入れるぜ」
「おぅ、サンキューな。政宗は?」
「・・・コレ終わったら入る」
「じゃあ終わんの待ってようかな。一緒に入ろうぜ?」
「・・・・・・sure」
ガシャガシャとメレンゲを泡立てる政宗の背後に立ち、邪魔にならないようにそっと腹に腕をまわす。
「酒臭ぇ」
「はっはー、そりゃ飲んできたからな」
言って、元親は己より頭ひとつ小さい政宗の鳶色の髪に鼻先をうずめた。
すぅ、と吸い込むと、甘いメレンゲの匂いに混じってフローラル系のシャンプーのかすかな香りとわずかな体臭が鼻腔をくすぐる。
「・・・なんかあったか?」
態勢はかえず、静かに元親が問い掛けた。
政宗がこうしてメレンゲを泡立てている時は、大抵、仕事場で何かストレスがあったのだと知っているから。
「言えねぇ事なら聞かねぇ」
無理に話す必要はない。そう仄めかして言ってやれば、ようやく政宗の泡だて器を動かす手が緩んだ。
「Thanx」
ごとん、キッチンの作業台にボウルを置いて、政宗は後ろに立つ元親にやや体重を預けるように上体を反らせた。
「すっげぇいけすかねぇ勘違い野郎がきてよ・・・」
今思い出しても腹の立つ、と唇を突き出すように子供染みた所作で言う政宗に、元親は無言で先を促した。
いわく、
どこぞのお洒落グルメ雑誌の記事を丸暗記しただけのような勘違いグルメ野郎が女性を伴って来店したのだと言う。
その男は、提示されたワインリストにトラットリアでは到底扱っていないような高級ワインの名をあげて記載がない事にクレームを付け始めたらしいのだ。従業員の手に余ると見た政宗が対応に出たところ、連れの女性の興味が政宗に向いてしまった事も男の癪に障ったのだろう、クレームはワインリストから従業員の態度まで及んだ。揚句、そのまま席を立ち、他の客にも聞えよがしに「こんな店」呼ばわりを始めたのだとか。
接客業をしていれば、クレームやトラブルは避けられない。
営業技術の職にある元親にも覚えはある。
「よく我慢したな」
えらいえらい、と政宗のこめかみに唇を落とす。
「That’s the way it goes.(仕方ねぇだろ)それにオレだって餓鬼じゃねぇんだ」
子供扱いに抗議するようにコツンと元親の肩口に後頭部を当てて、政宗は天井にむかって嘆息した。
元親が人の事を言えた義理ではないのだが、政宗の気性はどう大目に見ても穏やかとは言い難い。己の矜持を貶める者には容赦なくぶつかっていく。
しかし、少数とはいえ従業員を抱えて飲食店を営む身としては、客とのトラブルでいちいち激昂していては立ち行かない。
その折り合いをつけるのに生じたストレスを、政宗はメレンゲにぶつけるのだ。
「けどよぉ、」
にぃ、と。政宗の唇が薄い笑みをはく。
あぁ悪い顔をしている、と元親は心の内で微苦笑した。そんな顔も嫌いじゃない。
凭れ掛けている男がそんな事を思っている事などお構いなく、政宗が続けた。
「そいつが店を出る間際に引き留めて、言ってやったんだ」
恭しく礼をとって、お客様が所望とあらば必ずや取り寄せ致しますので次回ご来店に都合のいい日をご指定下さい、と。
「へぇ?そりゃまた・・・」
そこまでする必要はないだろう、と思い掛けた元親だったが、
「イタリア語でな」
政宗の言に、あっさり撤回した。
聞けば、その客は悪態を吐きながら逃げるように去って行ったらしい。さもありなん。
「そいつは気の毒に・・・けどよぉ、」
元親はふと思った疑問を告げた。
「もしそいつが理解して答えてきたら、どうしてたんだよ?」
国際化だグローバルだと言われていてもイタリア語が堪能な人間がごろごろいる訳ではない。が、いないとも言い切れない。
「Hum・・・それならそれで、きっちり予約してもらうさ。例え四つ星レストランでも常備できねぇようなワインであっても、必ず用意してやる」
そんな物をトラットリアで要求したのか、と元親は見も知らないクレーム男に呆れた。
「ただし、料理はサービスするがワインは実費で頂戴するけどな」
それが如何程のものかは、聞かないでおく。が、知ったかぶった見栄で払うには過分であるのは間違いないだろう。
しかし、だ。
「政宗?」
「Ah-hum?」
恐らく同伴の女性にカッコいいところを見せようとしたのだろうその客に、手緩かったとしても、それなりに意趣返しは出来ているのではないだろうか。であれば、今こうしてメレンゲを泡立てていたのは何故なのか。
やや腑に落ちない様子で問えば、
「あの野郎、俺や俺の料理だけならまだしも、従業員まで無知だの礼義がなってないだの言いやがった」
先程までつり上がっていた口の端を引き結んで、政宗が低く唸るように答えた。
政宗の店には元親も何度か訪れているので、彼が従業員の教育に力を入れている事は知っている。そして、従業員が政宗の期待にこたえようと頑張っているのも知っている。
「あぁ、それで」
可愛い従業員達が不当な評価を下された事に対して、何も手を打てなかった事が口惜しいのだろう。
「アイツ等、頑張ってくれてんのに・・・」
少し気落ちした声。
「ちゃんとフォローしてやったんだろ?大丈夫、伝わってるって」
「だったらいいけど」
振り仰ぐように元親を見上げ、儚く笑む政宗の唇に、元親はゆっくりと己のそれを寄せた。

大きなボウル一杯のメレンゲは、恐らくこれからシフォンケーキに姿をかえるだろう。
そして明日のランチにサービスとして客に振舞われるのだ。

*****

まとまらないっ!!
むしゃくしゃしたらメレンゲに怒りをぶつける政宗さんとか、可愛いかなぁ、と。
あれ泡立てるの結構ハードですよね・・・
で、そんなストレスから生産されたメレンゲが毎回シフォンケーキに姿を変えて消化されるとか何とか。
メレンゲを沢山使う料理・菓子が思い付かんかっただけなんですけど。すみません。


どうでもいい設定として、
・日本で調理師免許を取得した政宗さん、海外へ修行を積みに行ってたみたいです。
・ところが、その弟子入りした店のシェフと考え方の相違で派手に喧嘩して店辞めて帰国。
・だけど経営方針的なものは合わなかったけど感性は合ったから音信はあったり、変な関係。
・帰国して、どうしよーかなぁ、てこぼしたら「やりたいようにやってみればいいじゃない」とか言われて自分の店を持つ事に。
・出資者はお婆様・笑。
・政宗さんの実家は老舗の料亭かなんかで、トラットリアの食材も一緒に仕入れてもらう事でコストダウンを目指してます。
・たまたま外回り中だった元親さんが、開店準備中の政宗の店に入ったのが出会った切欠。
更にどうでもいいい設定として、
・実家の料亭かなんかは弟か従兄弟が継ぐ予定。
とかとか。

うん、ほんとどうでもいい・・・
ここまで長々とお付き合い下さり、有難うございました。

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